治療例 ハリネズミ

ハリネズミの皮膚糸状菌症と疥癬

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小さなこどものハリネズミさんが来院しました。

このヨツユビハリネズミさんはどうもかゆみがあるようです。
診せていただくと痂皮、鱗屑を伴っており、落屑もあります。
ごく狭い範囲の爪周囲に皮膚炎がありますが脱針は無いようです。

ヨツユビハリネズミさんは皮膚糸状菌(白癬菌)が多く確認されますので真菌分離用培地にて培養を行ったところ真菌の発育を認めました。trichophyton属に多いコロニーの特徴である、綿状でオフホワイトからバラ色のコロニーが確認されました。
また、早期にタンパクを分解しアルカリ性代謝産物を産生したため培地が赤変しました。

 

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顕微鏡にて菌糸や小分生子を確認しました。
よってtrichophyton mentagrophytes var.erinacei を疑いました。
確定診断にはほかの真菌培養試験等が必要となります。

しかし、今回のハリネズミさんはかゆみが強いのですぐに治療を開始しました。
また、人にも感染することがありますので飼い主さんを守るためにも治療を始めます。
以前は日本で確認されていない真菌でした。
しかし、2001年千葉大学真菌医学研究センターでヨツユビハリネズミより初めてtrichophyton mentagrophytes var.erinacei分離され、
2002年には18頭中7頭(陽性率38.9%)に確認されました。
2003年にヨツユビハリネズミが感染源と考えられた手白癬の人の1例が日本皮膚科学会で報告されました。

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しかし、この子のかゆみがそれが原因とは限りません。
この真菌に感染していても無症状の子もいます。
同時に行った皮膚掻爬試験の結果、疥癬ダニも確認されました。
疥癬は小さなダニ(Caparinia tripilisやSarcopyidnites sp. Choripotes sp.等のヒゼンダニ、キュウセンヒゼンダニやショクヒヒゼンダニ等)により発症します。顕微鏡で確認でき、肉眼でも非常に小さいですが見えます。少数寄生の場合確認しづらいダニです。
すぐにダニの治療も開始することになりました。
治療開始から1週間で皮膚炎、かゆみがすっかりなくなったちいさなハリネズミさん、元気に大きくなっていました。よかったね。

参考文献:Vol1 No.1 2005 Vived、Sue peterson エキゾチックペットの皮膚疾患、獣医真菌学、Vol.5 No.2 2013 エキゾチック臨床、J.Rakuno gakuen univ. 28(2):221~231(2004)