治療例椎間板ヘルニア

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雪解けも進み、春の予防時期になった日のことです。
ご年配の飼い主様がかわいがっているダックスちゃんがいつものバッグに入って来院しました。
その飼い主様はワクチン、フィラリア予防、マダニ予防、定期駆虫をしっかりと行っていますので今回も予防で来院されたと思っていました。
しかし、お話を聞いてみると昨夜より後ろ足が動いていないとのことでした。
いつものバッグに入っていたので病院に入ってくる際は顔しか見えなかったのです。
私もとてもショックでした。なぜなら、昔からずっと診せていただいており、私の大切なワンコという気持ちでした。また体重管理もしっかりされていたからです。
一度、心を落ち着かせてから診察を開始しました。神経学的検査において起立は不能で、痛覚もなく完全に麻痺している状態でした。
すぐに神経の腫れを抑える静脈点滴と手術を選択するかどうかのご相談をしました。
内科療法からスタートすることが多いのですが、神経の状況が悪いためすぐに手術を提示することになったのです。
飼い主様は悩まれた後、手術を希望されました。
そして、状況の詳細を把握するためCT撮影を行うこととなりました。

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当院にはCTはありませんので整形、脊髄外科の恩師である泉澤先生の北海道動物運動器病院のCTをお借りしました。
CT撮影を行うと椎間板物質が脊柱管内に逸脱し、脊髄やその周囲脂肪組織を圧迫している部位が特定されました。また、過去に逸脱したと考えられる椎間板物質も少量確認されました。
正確に特定された部位をすぐに手術する事としました。

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手術をスタートしました。
脊髄を露出していくと椎間板物質がCT画像と同じように逸脱していました。一部硬膜と癒着しており慎重に硬膜も部分切除することになりました。最高の手術場で、最高の機材器具で最善の手術ができました。そして手術を行った私に最高のサポートしてくれました北海道動物運動器病院の先生、スタッフに感謝を申し上げます。
ダックスちゃんに最高の手術ができてとても嬉しかったです。

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大きな椎間板逸脱物質を飼い主様にお見せしました。やはり驚かれていました。
ダックスちゃんは術後2日目に足の感覚がわずかに戻ってきました。5日目で支えてあげると起立ができるようになりました。12日目に自力で立ち上がり、数歩歩けるようになりました。26日目にはおぼつかない足取りですが小走りができるようになりました。
走りまわって元気な姿を見せてくれるのももうすぐのようです。